無所属クラブ会派行政調査報告 令和7年1月20日から22日まで
令和7年1月20日から22日にかけて、神奈川県海老名市、大和市、及び真鶴町並びに静岡県磐田市を視察しました。
小中学校の教材費無償化について【神奈川県海老名市】
教材無償化の背景と経緯について
海老名市では、入学に当たって多くの出費を要する小中学校1年生の保護者の負担軽減を目的に、平成27年度から教材費の無償化を実施してきた。平成29年度には、PTA会長会代表や保護者代表、校長会代表などの学校関係者、教育委員会で構成される海老名市保護者負担経費検討委員会での提言を受けて、「海老名市保護者負担の在り方についての方針」が定められ、ジャージコンペの導入、ワイシャツやポロシャツの指定廃止、柔道着と彫刻刀の共有備品化が進められた。そして、保護者負担の更なる軽減についても検討が行われた結果、令和6年度から教材費無償化を全学年に拡大することとなったものである。
教材費無償化の取組内容について
原則として「授業で使用するもの」、「学年全員が使用するもの」、「個人の物となるもの」が対象で、具体的にはワーク、問題集、便覧、資料集、実習・実験代のほか、ソプラノリコーダーと絵の具セット(小2)、書道セット(小3)、アルトリコーダー(中1)など、購入が必須となるものを含む学年ごとの支援上限額が下のとおり定められている。
学年 支援上限額
小1 10,000円
小2 12,000円
小3 16,000円
小4 11,000円
小5 12,000円
小6 13,000円
中1 19,000円
中2 13,000円
中3 14,000円
市立の各学校が教材を業者に発注し、その納品後、購入及び検品を教育委員会に報告する。教育委員会は業者からの請求とともにそれを確認し、支払いを行うというのが事業の概ねの流れである。海老名市では、市立だけでなく国公私立の小中学校に通う児童生徒の保護者に対しても同じ上限額で補助金を交付しているが、これは「同じ海老名市に居住している児童生徒の保護者であり、平等に経済的負担の軽減を行うのが妥当」(就学支援課)との判断によるものである。
なお、支援額は令和3年度の各校教材費平均額に物価高騰分を加算して設定されているが、原材料費や人件費の高騰を背景に教材の値上げも進んでいるため、今後は毎年度の見直しが必要と考えているとのことであった。
所感と大府市への反映
ただ無償化を実施するだけではなく、個人で所有する必要がない使用頻度の限られる教材については共有化も進められており、保護者負担の軽減という点では合わせて参考とすべき取組と言える。ただし、学校内に新たな保管場所を確保する必要があることを踏まえると、本市において教材の共有化を全市的に実施するのは施設面、運用面でのハードルが高そうである。
他の負担軽減策についても、保護者と学校双方の視点を入れた検討委員会での協議を経ていることで、現実的な手法という面で実現性の高い提言につながったのではないかと考える。ジャージコンペの導入では、実施時期が遅れたことで物価高騰の影響を受けた可能性がある1校を除き、ほとんどの中学校で2,000円から3,500円(ジャージ上下及びハーフパンツ)の価格抑制効果があったとのことであった。ワイシャツやポロシャツの指定廃止についても、品質や経済性などを踏まえながら様々な価格帯の商品を自由に選べるようになれば、全ての家庭にとって家計のやりくりの選択肢が広がることになる。育ち盛りの最中である中学生にとって、着る物の寿命が大人よりもはるかに短いことを考えれば、これも保護者の負担軽減策として非常に有効な取組と言えるだろう。
学校教育にかかる保護者負担の軽減策において、その選択肢はまだまだ多いこと、そして、その中には、必ずしも大きな財源を要しない施策が少なくないことを改めて実感した。本市にとって財政面での可否という点だけでなく、仕組みの改善や運用の工夫などによるものも含め、本市において実現可能な保護者の負担軽減策について、多くの示唆を得ることができた。
おひとりさま支援条例について【神奈川県大和市】
事業に至った経緯について
大和市では、平成28年7月から「葬儀生前契約事業」を開始した。この頃より、人生100年時代における多死社会の到来を想定しており、死後の葬儀、納骨、財産の行方といった高齢のおひとりさまが抱える不安を解消するために、福祉施策の一つとして始めた事業である。事業がスタートしてから1年11カ月で相談件数は168件に上ったものの、登録者は1人にとどまった。その翌年、平成29年6月には健康福祉総務課に移管した上で、「おひとりさまなどの終活支援事業」としてリニューアルした。資産、世帯状況、年齢などの条件を問わず、おひとりさまはもちろんのこと、夫婦や兄弟姉妹だけで暮らす世帯、あるいは子に負担を掛けたくない親世帯なども含め、終活の心配を抱える全ての市民を実質的な対象とした。
「大和市おひとりさま支援条例」は、核家族化や少子化、未婚化、長寿化などの社会構造の変化に伴う一人暮らし高齢者の増加、社会的孤立及び閉じこもり傾向の両方に該当する人の健康リスクの高さを踏まえ、さらに、市内の65歳以上の一人暮らしの方にアンケートを実施した結果、社会的孤立と閉じこもり傾向にある人が多いとわかったことから、「外出や社会交流の支援などを通じて、おひとりさまが孤立することなく、生涯にわたり生き生きと過ごしてもらえるよう」、また、「市が腰を据えて支援する姿勢を見せることで、市民に安心感を持ってもらう」として、令和4年6月29日に施行された。
「大和市おひとりさま支援条例」及び実施事業の概要について
条例の目的は、「年齢を重ねたことにより他者や社会との関わりを必要とする一人暮らしの市民」=「おひとりさま」が、孤立することなく、生涯にわたって生き生きと過ごすことができるよう、それぞれの気持ちに寄り添った支援を行うこととしている。「おひとりさまが他者や社会とのつながりを持ち続けることができる環境を構築すること」、「おひとりさまのニーズを的確に把握し、時代に適合した必要な支援を行うこと」、「おひとりさまの価値観を尊重し、それぞれに合った支援を行うこと」を基本理念に掲げ、「おひとりさまに関する普及・啓発」、「おひとりさま及びその家族等への相談支援」、「おひとりさまの外出及び社会交流の支援」、「おひとりさまの支援に関する情報の収集及び提供」という4つの基本施策が示されている。
これに基づいて市が実施している「おひとりさま施策推進事業」の中で、「おひとりさまなどの終活支援事業」はその核となる事業となっており、終活相談(終活コンシェルジュ)では、相談者からの相談内容に応じて協力葬祭事業者の情報を提供するほか、司法書士などの法律の専門家とのコーディネートにも取り組んでいる。葬祭事業者や法律専門家との生前契約を登録する「終活登録」の登録者には、登録カードを発行して情報管理し、希望者には安否確認も行う。
「おひとりさま支援事業」では、「同じような境遇にある人と情報交換したい」との声が寄せられていたこともあり、市内在住の65歳以上のおひとりさま(おふたりさま)が気軽に参加でき、交流を深められる場を提供するとして「終活カフェ」を開催している。また、おひとりさまの支援に関する情報の収集体制としては、高齢のおひとりさまの実態とニーズを把握し、その支援に生かすことを目的とした「おひとりさまアンケート」が、令和3年度から継続的に実施されている。前年度に健康づくり推進課が実施した「介護予防アンケート」(要介護認定を受けていない65歳以上が対象)で、「気を配ったり思いやったりしてくれる近くに住む家族がいない」と回答した方を対象に行っているもので、令和5年度は7月7日から8月4日までの日程で、対象者1,670人にアンケートを郵送し、1,057人から回答を得ている。
一方で、相談支援の実施体制については、「終活コンシェルジュ」の体制強化を令和5年度に行ったこともあり、市民からの相談件数は同年度に過去最多を記録している。
所感と大府市への反映
おひとりさまの実態やニーズを把握するための定期的なインプットと、より良い施策へとスパイラルアップさせていくためにそれをどう生かすかというアウトプットが、条例を中心軸とした政策サイクルとして適切に回っているという印象を持った。
「おひとりさまアンケート」における主な質問の一つに、他者とのコミュニケーションや外出の頻度を尋ねるものがある。独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の資料「孤立と閉じこもり傾向の重積が健康に与える影響(埼玉県和光市での6年間の追跡)」によると、「閉じこもり傾向」があり、「社会的に孤立」している人は、そうでない人と比べて6年後の死亡率が高いとされており、市内の「おひとりさま」の実態を正しく捉えるための重要ポイントとして、大和市はこれら2つの点の的確な状況把握を何より重視しているのである。その上で、「ひとりで参加したい催し」を尋ねる質問項目では、「映画鑑賞」との回答が3年連続で1位になったことを踏まえ、外出促進と終活の周知を両立させる企画として、映画「老後の資金がありません!」の上映会を開催した。市内の葬祭協力事業者による相談会も合わせて実施したところ、約800人もの来場者が訪れるという素晴らしい成果を上げている。
令和4年度の「介護予防アンケート」では、「終活に関心があるか?」という質問に63%の人が「はい」と回答している一方、「終活準備をしているか?」という問いでは「はい」が23%にとどまっている。大和市はこのことから、終活に一歩踏み出す人をどう増やしていくかという点にフォーカスして、その取組を進めているところである。
誰もが終活を自分ごととして身近に感じ、主体的に考えられるようになるためのきっかけづくりや、あるいは、より相談しやすい環境づくりの工夫など、本市が今後、更にどう取り組んでいくべきかを検討する上で、条例化の意義も含めた政策研究を引き続き進めていきたい。
景観への取組について【神奈川県真鶴町】
「美の条例」及び「美の基準」策定の経緯
真鶴町は、全国でも先進的な景観まちづくりの取組を進めている自治体の一つであり、その中心となるのが「美の条例」(真鶴町まちづくり条例)と、その中に内包される「美の基準」である。平成6年に制定された「美の条例」は、町の自然環境や歴史的景観を守り、住民と行政とが協働して景観を形成することを目的としたものである。
本条例が生まれる契機となったのは、昭和62年に施行されたリゾート法である。リゾート開発を促進するこの法律のもと、真鶴町にも外部資本によるリゾートマンション建設などを始めとした大規模な開発計画が持ち上がり、町の豊かな自然や歴史的景観が損なわれる可能性が浮上した。町民はこれに強い危機感を抱き、平成2年の町長選挙ではリゾートマンション建設反対を掲げる町長(三木邦之氏)が当選。同年、一定規模以上の建築物について、水道を供給しないとする「給水規制条例」を制定し、新たな大規模開発を事実上拒否した。その後、景観を守るための独自のルールを設けるため、町が住民と協力して景観形成の指針を策定し、「美の基準」を規定する「美の条例」が誕生した。
「美の基準」は、「美の条例」における、美しさを誘導するためのルールとなるものであり、景観の調和や地域の風土を尊重するための定性的な指針として策定された。69の具体的なキーワードと8つの原則が定められており、これにより町の景観を守るだけでなく、新たな建築やまちづくりにも柔軟に対応できる仕組みが整えられている。特に、建築物のデザインにおいては、周囲の景観との調和を重視し、色彩や高さの制限が設けられている。
「美の基準」を軸としたまちづくり
真鶴町の景観行政の特徴は、住民主体のまちづくりにある。「美の基準」を根拠とし、町民が主体的に景観を維持し、向上させる仕組みが整備されている。
「美の基準」は、町の景観を守るための基本理念として、以下の8つの原則に基づいている。
1. 場所 - 町の地勢や輪郭、風土を尊重する。
2. 格づけ - 歴史や文化を反映した町並みを形成する。
3. 尺度 - 人間のスケールに合った建築を推奨する。
4. 調和 - 建築物が自然環境や町並みと調和するよう設計する。
5. 材料 - 町の風土に根差した建材を活用する。
6. 装飾と芸術 - 町の独自性を活かした装飾を施す。
7. コミュニティ - 町民が関わることができる景観づくりを推進する。
8. 眺め - 景観の美しさを維持し、眺望を保護する。
しかし、「美の基準」は単なるデザインコードとしてだけでなく、真鶴町における「ライフスタイルブック」としての役割も果たしている。景観のためのまちづくりではなく、生活の積み重ねの上に景観があるという考え方が根底にあり、行政も景観を守るだけでなく、町民の暮らしを守るという意識で取組を進めている。
このため、「美の基準」は生活の作法に近いものであり、古くから町に住む住民にとっては「美の基準とは何か」という意識はあまりなく、自然に受け入れられている。一方、町外からの移住者にとっては、こうした町の文化や価値観が魅力的に映り、移住の動機となることもあるという。
また、条例制定30周年を記念して実施された「美の基準ウィーク」は、町の景観に対する意識を高めるための重要な取組となった。期間中には、町の美しさを再発見するまち歩きツアー、町民参加型のワークショップ、歴史的景観の振り返りを行う催しなど、多彩なプログラムが実施された。これにより、町民自身が真鶴の景観の価値を再認識し、日々の暮らしの中で景観を意識する契機となった。
現在、策定から30年が経過し、かつては膨張していく社会の中で開発をコントロールするためにできた「美の条例」や「美の基準」が、人口減少や時代の変化に伴い、どのように町の個性として活用するためにアップデートしていくかが課題となっている。「美の基準」自体が詩的で完成されたものであるため、その内容を直接改定するのは難しい。そこで、副読本の作成など、新たな形での情報提供の方法が議論されている。
所感と大府市への反映
今回の視察を通じて、真鶴町の景観形成の取組は、住民主体のまちづくりの好例であると感じた。本市においても「大府市景観計画」が策定されているが、市民への周知や具体的な運用については課題がある。真鶴町のように、住民が主体的に景観形成に関わる仕組みを強化することで、まちの魅力向上につなげることができると考える。
また、景観形成に関する指針を明確化し、市民が理解しやすい形でのガイドライン整備が求められる。特に、建築物や工作物のデザイン調和を推進するためのルールづくりが必要であり、真鶴町の取組はその参考になる点が多い。
さらに、本市においては、真鶴町ほどの先進的な取組をそのまま適用することは現実的ではないが、景観条例の策定を視野に入れた景観行政の推進は十分に検討に値する課題と考える。住民の意識向上を図るための施策や、地域の特性を活かした景観形成の方針を策定し、より実効性のある景観施策の実現を目指すことが求められる。
今後、本市として、景観計画の実効性を高め、市民が主体的に関与できる仕組みを構築し、地域の特色を生かした景観行政を進めることが重要である。今回の視察を通じて得た示唆を生かし、よりよい景観形成を目指していく必要があると考える。
JR御厨駅の新設について【静岡県磐田市】
駅設置に至った経緯について
御厨駅の設置計画は、昭和62年に7,455人の署名を伴う請願から始まった。地元住民の署名運動は、新駅設置を求める強い要望を示すものであり、磐田市はこれを受けて検討を開始した。これに対し、JR東海は条件として100haの開発と10,000人の定住人口の増加を提示。これに対応するため、段階的に区画整理事業が進められることとなった。
しかし、区画整理に対する地区の対応は一様ではなかった。平成4年には磐田市東部土地区画整理組合、平成7年には磐田市新貝土地区画組合が設立され、新駅誘致のため区画整理が進められたが、その後の区画整理が難航したため、計画は停滞することとなった。特に、周辺には古くから花き栽培の盛んな鎌田地区があり、区画整理に対し容易には賛同が得られず、計画は棚上げ状態となった。
その後、平成21年に鎌田第一土地区画整理組合が設立され、新駅設置への機運が再び高まり、計画が再開された。平成26年にはJR東海との間で新駅設置協定が締結され、平成28年から4年をかけて新駅が建設された。そして、令和2年3月14日に御厨駅が開業した。
事業費は約56億円で、請願駅であるため、施設については磐田市がその大部分を負担したが、県からの補助金5億円のほか、ふるさと納税や地元企業・住民からの寄付金約2億3,000万円が調達された。こうした取組は、市民の理解を得る上で一定の役割を果たした。自由通路や新駅周辺の造成工事は、街路事業や用地対応分について、国庫補助が下りている。
駅設置に当たり、開業時の計画乗降者数は2,000人から3,000人と想定されていた。しかし、実際の利用状況はこれを大きく上回り、令和5年度の御厨駅の乗降者数は4,508人となっている。今後の予測では、6年後の将来乗降者数は6,525人と見込まれている。
この需要予測の根拠は、平成22年3月のパーソントリップ調査によるものであり、当時の予測では、磐田駅と御厨駅の利用者数が将来的に同程度になることが示されていた。しかし、駅開業後は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ヤマハ発動機本社への出張減少やテレワークの普及、ヤマハスタジアムの試合無観客開催など、想定外の要因が利用者数に影響を与えた。それでも、磐田駅の回復よりも御厨駅の利用者増加のほうが上回る傾向が見られる。
駅開業に伴うまちづくりについて
駅開業により、駅周辺のインフラ整備が進み、自由通路の設置により通学路の安全性が向上した。また、駅開業により駅周辺の地価は上昇傾向にある。平成29年度から公示価格が公表されており、毎年少しずつ上昇しているほか、御厨駅周辺の区画整理事業による固定資産税や都市計画税などの市税収入は年間8億円以上の増収が見込まれている。
一方、駅開業後に明らかになった課題として、駅北口周辺にあたる新貝地区の土地利用計画の問題が挙げられる。新貝地区では、新駅誘致が決定する前に区画整理が進んでいたため、駅前に核となる施設を誘致することができず、戸建住宅が点在する状況となってしまった。これを受け、新貝土地区画整理組合が磐田市に対して、駅前街区の容積率を200%から300%に変更するよう要望し、地区計画の変更が実施された。
さらに、駅周辺のにぎわい創出に向け、磐田市は公民連携を進めている。駅周辺には複数の市有地が存在しており、これを活用して民間事業者と連携し、駅周辺の活性化を図る取組が行われている。
所感と大府市への反映
御厨駅の設置に向けたプロセスや課題の対応は、本市の新駅構想を考える上で多くの示唆を与える。特に、地域住民との合意形成の在り方、駅設置に伴う土地利用計画の整備、財源の確保、開業後の地域の発展といった視点は、本市においても十分に考慮すべき課題である。
まず、新駅構想を進める上で、地域住民の意見を反映させることが不可欠である。磐田市では、住民の署名運動が新駅設置の契機となり、長期にわたる調整の末に実現に至った。加えて、区画整理事業を通じて駅周辺の開発を進める中で、住民の合意を得るための調整が行われた。本市でも、新駅構想に対する市民の意向を丁寧に把握し、透明性をもって議論を進めることが求められる。
また、新駅を設置する場合、その後の土地利用計画の適切な検討が重要である。磐田市では、区画整理事業が駅開業以前から進められていたが、駅前の土地利用計画が十分に調整されておらず、駅前に核となる施設が誘致できないという課題が生じた。結果として、地区計画の見直しが必要となり、容積率の引き上げなどの対応が行われた。本市でも、新駅周辺での土地利用計画を検討する場合には、将来的なまちづくりの方向性を見据え、計画段階での調整が重要となる。
資金調達についても、学べる点がある。磐田市では、新駅設置の費用の大部分を市が負担したが、県の補助金や国庫補助に加え、ふるさと納税や地元企業・住民からの寄付金を活用し、一部財源を確保した。こうした手法は、新駅設置の恩恵を直接受けない市民にも一定の納得感を得てもらうための工夫といえる。本市でも、新駅設置を進める場合には、財源確保の在り方を慎重に検討し、市民の理解を得るための方法を模索することが求められる。
また、駅開業後における土地利用や税収の変化についても注目すべきである。磐田市では、新駅開業後に地価が上昇し、駅周辺の市税収入が年間8億円以上増加する見込みとなっている。一方で、当初の土地利用計画の問題により、駅周辺のにぎわい創出に向けた追加の施策が必要となった。本市でも、新駅構想を議論する際には、税収の見通しとともに、開業後の地域活性化の視点を持つことが重要である。
御厨駅設置の事例からは、新駅構想において長期的な視点での計画立案と、住民意見の反映が重要であることが改めて確認できる。今後、本市の新駅構想を議論するに当たり、市民の意見を丁寧にくみ取り、透明性のあるプロセスのもとで慎重に検討を進めることが求められる。
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