厚生文教委員情報交換会(ハッピースポーツ代表 渡部 和華羽 氏) 2026(令和8)年8月20日
本年度、厚生文教委員会では、「こどもの身体づくりについて」をテーマに調査研究を進めている。2026(令和8)年8月20日、オランダ体育の理念や実践方法について、ハッピースポーツ代表の渡部和華羽氏と情報交換会を行った。情報交換会では、オランダ体育が、全てのこどもが楽しく主体的に身体を動かすことを重視し、一人一人の違いに応じた運動環境を整える考え方について学んだ。情報交換会終了後には委員意見交換会を行い、本市の「こどもの身体づくり」にどのように生かすことができるかについて意見を交わした。
こどもの身体づくりについて

オランダ体育の特徴・情報交換会で学んだこと
- オランダ体育は、従来の一斉的な体育指導から転換し、「すべてのこどもが楽しく、主体的に運動できること」を基本的な考え方としている。勝敗や技能の習得だけを目的とするのではなく、こどもが自発的に身体を動かし、運動することそのものを楽しめる環境づくりを重視している。
- 授業では、同じ運動を全員が一斉に行うのではなく、一度の授業の中に複数の運動環境を設け、こどもが自分に合った活動や難易度を選択できるよう工夫されている。これにより、運動が得意なこどもだけでなく、苦手なこどもも自分のペースで参加しやすくなる。
- 学習内容は「種目」だけでなく、「バランス」、「滑る」、「乗る」、「投げる」、「跳ぶ」、「走る」などの「動き」を中心に捉えている。教師は一方的に教える指導者ではなく、こどもの動きを引き出し、学びを促す「ファシリテーター」として関わることが特徴である。
- 人数、ルール、用具、距離、高さ、障害物などの条件を変えることで、同じ活動でも難易度や運動量を調整することができる。こどもに合わせて環境を変えるという発想は、「できる・できない」で運動を分けず、参加のハードルを下げることにつながる。
- 従来のドッジボールの「痛い・怖い」、「一部の人しか活躍しない」といった課題を踏まえた「カオスボール」の事例では、誰も排除されず、より多くのこどもが活動できるようルールが工夫されている。渡部氏から提供された資料では、比較例として総投球回数がドッジボール203回、カオスボール360回と示されており、ルールや環境の工夫が活動量を増やす可能性を具体的に示していた。
- オランダ体育では、身体を動かすことだけでなく、仲間との関わりや主体的な判断など、社会性や心の面も含めてこどもの成長を捉えている。運動を通して自信や笑顔につなげていくという理念が示されていた。
現状と課題
- 当委員会のテーマである「こどもの身体づくり」を考える上では、運動が得意なこどもへの取組だけでなく、普段あまり身体を動かさないこどもや、運動に苦手意識を持つこどもをどのように身体活動につなげ、日常生活の中で身体を動かす時間を増やしていくかが重要な視点となる。
- 学校体育では学習指導要領に基づいた授業が行われているため、新たな取組を単純に追加するのではなく、既存の授業や活動の中で、こどもが主体的に選択できる場面や、遊びの要素、難易度を選べる工夫などをどのように取り入れられるかを考える必要がある。
- こどもが運動を好きになるか、嫌いになるかには、大人の関わり方も大きく影響する。技術や結果を求め過ぎるのではなく、こどもの「やってみたい」という気持ちを引き出し、失敗しても繰り返し挑戦できる環境をつくる視点が必要である。
- 身体を動かす機会は学校だけで完結するものではない。放課後や休日に、公園、公民館、こども(幸齢者)交流センターなど身近な場所で、こどもが自由に遊びながら身体を動かせる機会や環境をどのように確保するかも課題である。
- オランダ体育そのものの導入効果や、オランダのこどもの体力向上との直接的な因果関係については、今回の渡部氏から提供された資料だけでは確認できない。そのため、特定の手法の導入を目的とするのではなく、その理念や考え方のうち、本市に生かせる部分を見極めていく必要がある。
大府市への反映・所感
情報交換会終了後の委員意見交換会では、オランダ体育の理念に共感する意見が多く出されるとともに、その考え方を本市の「こどもの身体づくり」にどのように生かしていくかについて、以下のような意見が述べられた。
- 運動しないこどもや運動が苦手なこどもに対して、「身体を動かすことは楽しい」と感じてもらうことが重要である。オランダ体育に見られる、こども自身が活動を選ぶことや、一人一人に合わせてルールや環境を変えるという考え方は参考になる。
- 学校で新しいプログラムを一律に導入することを求めるのではなく、現在の体育授業や休み時間等の中で、既存の内容を工夫したり、遊びの要素を取り入れたりするなど、学校現場が取り組みやすい形を検討することが必要である。
- 学校だけでなく、スポーツ少年団、放課後の活動、保育園・こども(幸齢者)交流センター、公民館、地域活動など、こどもと関わる多くの大人に「こどもの主体性を大切にする」、「楽しみながら身体を動かす」という考え方を知ってもらう機会を広げることも重要である。
- 公園、公民館、こども(幸齢者)交流センター等の身近な場所に、特別な技術を必要とせず、こどもが自然に遊び始められる用具や環境を用意することも考えられる。モルックなどの簡単な活動を含め、身体を動かす入口を増やすことが、運動習慣の形成につながる可能性がある。
- 重要なのは「オランダ体育を導入すること」そのものではなく、運動が苦手なこどもも排除されず、自分に合った方法で参加でき、主体的に楽しめる環境を大人がつくるという理念である。学校、家庭、地域それぞれの場で、この考え方をどのように実践できるかを検討していく必要がある。
今回の情報交換会を通じて、「こどもに運動をさせる」という大人側からの発想だけではなく、こども自身が「やってみたい」、「楽しい」、「またやりたい」と思える環境を整えることの重要性を改めて認識した。特に、こどもの身体活動時間を増やしていくためには、体育の授業だけにその役割を求めるのではなく、休み時間や放課後、休日など、日常生活の中で自然に身体を動かす機会を増やしていく視点が必要である。学校だけでなく、こども(幸齢者)交流センター、公民館、公園、地域活動など、こどもが日常的に過ごす様々な場所において、運動の得意・不得意にかかわらず参加できる環境づくりを進めることが重要である。
オランダ体育に見られる、こども自身が活動を選択できることや、一人一人に応じてルール、用具、難易度などを工夫するという考え方は、こうした身体活動時間を増やすための環境づくりを考える上でも参考となる。今後は、オランダ体育という一つの手法に限定するのではなく、その理念や考え方も参考にしながら、「人・場所・用具・ルール・機会」の工夫によって、運動習慣のないこどもを含め、より多くのこどもが主体的に身体を動かし、結果として日常生活における身体活動時間の増加につながる仕組みをどのようにつくっていくのかという視点を持ち、調査研究を進めていく。
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