厚生文教委員会行政視察 令和6年11月5日から7日まで
令和6年11月5日から7日まで、大阪府堺市、岡山県岡山市及び夢のみずうみ村 防府デイサービスセンター(山口県防府市)を視察しました。
介護予防「あ・し・た」プロジェクトについて【大阪府堺市】
取組の背景、目的
これまでも介護予防教室や啓発活動は行ってきたが、従来の介護予防策のみでは対応できない課題があり、より効果的な取組が必要となった。
従来の介護予防事業の課題
- 参加者層の固定化・・・参加者の多くが女性であり、更に、後期高齢者が多い
- プログラムのマンネリ化・・・筋力トレーニングや脳トレといった内容が中心で教室終了後は介護予防活動を継続しにくい
- 地域の担い手の不足と高齢化・・通いの場などの地域での介護予防活動推進における担い手が不足
- 事業評価・・・教室参加者の個人成績の変化を評価することはできるが、それが社会保障費の削減に結び付いたのかどうかを評価することが困難
取組の内容と現在の状況
課題解決に向け、公民連携で取り組む介護予防にシフトし、PFS(成果連動型委託契約)を導入して事業を進めることとした。(PFSの成果指標は第三者機関を入れて評価)
事業内容として、高齢者がいつまでも元気に安心して自立した生活を維持することができるよう、「あるく(身体活動)」、「しゃべる(社会参加)」及び「たべる(食生活)」に関するフレイルの予防を促進させるための堺市介護予防「あ・し・た」プロジェクト事業を実施してきた。
参加者の拡⼤と活動を継続できるようにするため「きっかけづくりのプログラム」を実施し、多様な趣味や学びに対応できるよう本格的な「学びのプログラム」を実施し、その活動を披露する機会となる「活躍の場プログラム」を実施。事業期間中にこの流れを3クールつくり、継続性につながるように工夫している。
委託業者からは、「同じ目標に向けて、パートナーとして創意工夫を重ねながら行政と協力して事業を遂行できたことで、 新たなノウハウを蓄積できた」「プログラム開発や活躍の場の開拓のため、地域貢献に関心のある地元企業や研究フィールドを求め、学識者とも新たなつながりができた」と高評価を得ている。
大府市への反映・所感
成果連動型委託契約を採用し、委託先の企業努力や達成の度合いを数値基準で評価することは、誰が見てもわかりやすのではないかと思った。
委託にシフトしたことにより、行政だけでは考え付かない取組を実施し、従来の介護予防事業の課題解決につながっていると感じた。事業の成果によって、委託料が変動することで、受託企業が、企画だけでなく、よりよい結果を出すために、今まで培ったノウハウだけでなく、更に新たなアイデアを出すことにつながっていると考える。
堺市の参加募集のパンフレットには、従来の福祉事業で当たり前に使用していた「介護予防」「健康」という言葉は一切使わず、デザインや写真にこだわったとのことである。見やすいデザインと多様性が問われている中でも、男性限定や女性限定のプログラムを準備し、特に「男の本気」をネーミングに入れることにより、課題である「男性の参加」を促す工夫を行っている。また、「女性限定」の美しい姿勢ときれいなウォーキングなど、高齢者でも興味を持って参加できるようにしているところがよいと感じた。
本市では、高齢者の地域参加の課題として、高齢になってから地域の活動に参加したいと思っても、従来の参加者の輪には入りにくい等の意見がある。また、自分自身は高齢者扱いをされたくないので参加したくないといった声もある。そういった課題の解決方法の一つとして、高齢になる前の50代や60代の早い段階で地域参加ができる仕組みを構築することが、外出する動機付けの一助となると考える。
在宅介護総合特区(AAAシティおかやま)について【岡山県岡山市】
取組の背景、目的
岡山市では「高齢者が、介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の構築」をコンセプトに、全国でも数少ない「在宅介護」に焦点を当てた総合特区(AAAシティおかやま)を平成25年から実施している。
総合特区では目標を達成するために様々な事業を実施しており、特に効果があったものは岡山市内だけではなく全国的にも広がるような要望を国に行っている。これまでにも「ADL維持等加算(介護サービス事業所の取組結果を評価する制度)」や「医療法人による配食サービスの実施」などの制度が、岡山市の働き掛けをきっかけに全国へ広がっており、これからも「地方から国を動かす」ことを目指して取り組んでいる。
【総合特区とは】
総合特区とは、地域の様々な課題を解決するために定められた国の制度である。自治体が総合特区の実施を国に申請し、それが認定されれば、関係省庁と協議の上で従来の規制を緩和したり、全く新しい制度を実施したりといった特別な措置をその地域限定で実施することができるようになる。
取組の内容と現在の状況
平成25年から、地域活性化総合特区で唯一の在宅介護に焦点を当てた事業を実施している。
高齢者が、介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる社会の構築を目指して、自立支援に重点を置いたケアを推進し、事業成果を元に全国的な制度の創設や改正を進めている。AAA=Ageless(エイジレス)、Active(アクティブ)、Advanced(アドバンスト)として、 “AAA(トリプルエー)シティおかやま”を愛称として取組を進めている。
国の制度上、総合特区は基本的に1期5年間を目安として国から指定をされており、指定の期間終了後も総合特区を継続する場合には、国と改めて協議をする必要がある。令和4年度現在、岡山市の総合特区は第2期の5年目となっており、来年度以降の第3期実施を目指して、新たな規制緩和などの提案を持って国と協議する。当該総合特区では、高齢者自身による予防や介護度の改善に通じた施策の実施等による将来負担の抑制や、在宅介護を可能とする最先端介護機器の活用による産業振興、在宅で安心して暮らすことができる地域包括ケアの実現等の施策を一体的・総合的に実施することにより、来るべき超高齢社会を乗り越えることができる新しい社会経済モデルを構築することを目指している。
これまでに在宅サービスに特化した総合特区は全国でも例はなく、こうした取組を実現することで超高齢社会を乗り越えることを目指している。
大府市への反映・所感
岡山市は、介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らすことができることを目的に特区となり、様々な規制緩和に取り組んでいる。厚生労働省と対等に議論し、自治体という現場での目線で国に提言を行い、その成果は岡山市だけではなく、全国に波及している。
デイサービスの送迎の柔軟化については、デイサービス利用の利便性を向上させ、外出機会の創出につながると考える。
今回の委員会テーマのある外出機会の創出については、「高齢者活躍推進事業」である「ハタラク」の取組が合致しており、要介護高齢者となっても、地域で働くことやボランティア活動をすることで、自己有用感を得ることができ、本人の生きがいにつながり、健康増進にも貢献すると考える。要介護者となった場合、家族や福祉事業者の協力がないと外出することが困難で、どうしても家に引きこもりがちになるところではあるが、「ハタラク」のような取組があれば、本人の意思を尊重し、外出することができ、なおかつ、人の役に立てるということが実現可能となっている。
大府市でも要介護となった高齢者が、外出して働く意思や、地域に貢献したい思いを実現できるように、介護施設や市内の事業者の理解と協力を得て、また安全性を考慮しながら実現できるように、つなぎ役を本市が担うことで、高齢者の外出機会の創出につながることが期待できる。
高齢者にとって魅力的な外出先について【夢のみずうみ村 防府デイサービスセンター】
施設について
夢のみずうみ村デイサービスセンターでは在宅生活を継続していきたい、人生現役で過ごしていきたいと思っている方に元気で過ごしていただくためのたくさんの仕掛けをしている。デイサービスセンターの時間を楽しむことが、自然とリハビリにつながると考えている。
運営方針は、「可能な限りその居宅において、その有する能力に応じて、自立した生活を営むことができるよう必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身機能の維持ならびに利用者の家族の身体的・精神的負担の軽減を図る」こととしている。
取組の内容について
一日の過ごし方は、それぞれ自分で決める。
多種多様で豊富なプログラムメニューが用意され、過度の介護による状態の悪化を防ぎ、訓練としてのリハビリにとどまらず、生活を楽しむためのリハビリを実践している。
・バリアアリー:夢のみずうみ村には、段差、坂、階段等日常で遭遇する可能性のあるバリアを意図的に配置した「バリアアリー」の施設。
・one step one goods:一歩先に、さわるもの、すがるもの、寄りかかるものが必ず最低1つ以上ある環境を整備。
・自己選択・自己決定:その日の自分の行動、プログラムを決め、マグネットプレートをプログラムボードの時間枠に張り付けていきます。メニューは多種多様のものを準備。
・村内通貨「YUME(ユーメ)」:夢のみずうみ村には、村内通貨「ユーメ」があり、各リハビリプログラムに参加するときは、ユーメを支払い、カジノ(ルーレットやトランプ)やクイズ、見学者の案内や内職等でユーメを稼ぐこともできる。
・師範・師範代制度:夢のみずうみ村では、利用者さんが先生となって他の利用者さんを指導する教室が幾つかある。「片手料理教室」では、片手で料理をするコツを身に付けた片手まひのある師範・師範代がおられ、他の片まひの利用者さんに片手でできる料理づくりのノウハウを教えている。
大府市への反映・所感
まず最初に驚いたのは、利用者自身が視察の案内人だったことである。案内人の方も体に不自由な部分があるものの性格は明るく、気さくに施設内のことを何でも教えてくれて、質問にも応えてくれた。
施設で感じたことは、昔なつかしい雰囲気があり、家具等の設備、掲示物などは、ほとんどが手作りされており、利用者にも居心地の良い居場所と感じやすい雰囲気になっていると感じた。
また、一見危険そうな設備や道具があったが、事故は起きていないと聞いた。危険な部分を残しながらも、安全面もしっかりと考慮して、自分のできる範囲を自分で考えることにつながっているように感じた。
また、職員さんは利用者それぞれの状況に配慮し、極力手を貸さない、いわゆる「バリアアリー」の考えを取り入れることで、利用者の機能の強化につながる取組として、非常に効果的だと考える。
村内通貨「YUME(ユーメ)」については、稼ぐとことも使うことも自由にでき、視察案内をすることでユーメを得ることができる。村内通貨は、施設内の様々なシーンに利用でき、他の方にコーヒーなどを振る舞うこともできる。村内通貨を多く稼ぐことにより利用者本人の活動に対する満足度を高めていると実感した。
大府市として、気軽に立ち寄れる公共施設とするには、利用者の意見を最大限反映できるような仕組みを取り入れて、自由に過ごせることが必要だと考える。
デイサービス等の介護施設については、介護が必要になる前から体験や見学ができるような配慮が本市としても必要ではないかと考える。
高齢者が行きたくなる、外出したくなる、そういった施設を整備するにはお金や場所だけでなく、様々な創意工夫を取り入れて、実現できるような行政の関わりが必要だと考える。
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