親和クラブ会派行政調査報告 令和6年7月1日から3日まで
令和6年7月1日から3日にかけて、京都府京都市、愛媛県新居浜市、愛媛県西予市を視察しました。
PFIを活用した複合施設について【京都府京都市】
取組の背景及び目的
京都市では人口のドーナツ化現象により、子どもの減った中心地域の小規模校問題の解決に取り組んだ。京都市では小規模校の問題は、教育問題であるとともに、地元問題であるという考え方で取り組んでいる。また、学校統合については関係学区の「統合要望書」を地域から出してもらい、それに基づいて実現を図っている。
取組の内容と現在の状況
- PFI手法導入の効果は、財政支出の削減・平準化(落札者決定時:従来方式 90.1億円 PFI方式 63.2億円 削減額26.9億円)と民間ノウハウを最大限に活用し、設計から維持管理までを一括発注することによる効率的な事業実施により、コスト削減ができたことなどがある。
- 安心かつ効率的な複合施設の維持管理業務として、24時間常駐・各種定期維持管理業務の実施により、施設修繕も即、対応できていたが、PFI方式による契約は15年間であった。
- 施設の保全・状況などを考えた場合、契約がどのように変わっていくのかが問題となっていたが、15年の契約期間終了後は、管理会社による一括運営ではなく、各業者との個別での対応(例えば、清掃のみを行う会社と個別契約するなど)となっていた。
- 幸いにも、一括管理の際に関わりのあった業者が、ほとんどその後の個別契約に応じてくれたことで、一括管理と同様の運営が可能となっている。
- 複合施設でありながら、それぞれの施設は独立したスペースで区切られており、動線がはっきりと分かれた構造になっている。これは安全性を考慮しての構造とのことである。
今後の取組と課題等
- 施設の利便性から人気が出たことや、再開発により周辺地域にマンション建設などが増えたため、生徒数が約2倍まで増加した。そのため、本来はオフィススペースとしていたところを教室として利用するなどの対応が求められている。生徒数が増えることは喜ばしいが、これ以上増加すれば対応ができないおそれもある。
- 使いやすさと快適さを追求した施設は人気が出たために、逆に課題を生む結果にもなっている。これから生徒数が増加するおそれがあるため、教室などの対応を検討する必要がある。
所感
この事業は学校の統廃合がきっかけであり、地域住民とワークショップを重ねて、地元の描いた学校像・地域づくりを行った結果である。学校施設にデイサービスや保育園、地域の人々のふれあいルームやにぎわいを創出するため、レストランやパン屋が併設されており、子どもの教育に何が大切で、幸せなのかを考えさせられた。大きな成果の一つは、多世代交流の一大拠点としての機能が生まれたことであろう。今後、人口減少において同じ問題は、必ず本市にも起こり得ることから、一つの選択肢として大いに参考となった。
本市は、持続可能なまちづくりのため、自治区・コミュニティを核とした協働のまちづくりに向けて、重点的に取り組んでいる。今後、行政だけでは対応することが困難になってくるので、「住民が主役のまちづくり」を進めるためにも、人材の育成、財政支援など、取組の基本的な考えやルールをわかりやすく示し、住民自治の確立に向けて気運を高めていくことが重要である。
コミニュティFMを使ったシティプロモーションについて【愛媛県新居浜市】
取組の背景及び目的
新居浜市では、市民への各種情報の一斉伝達手段として、平成23年度にデジタル同報系防災行政無線、平成25年にIP告知放送を利用した自治会広報連動システムを構築した。ところが、新居浜市自体が234㎢と広いことや、悪天候時の屋内では、屋外スピーカーの音声が聞き取りにくい等、市からの避難情報伝達手段としては十分ではなかった。このため、専用の受信端末を使用しなくても、一般家庭や車内で手軽に聞くことができるFMラジオを検討し、平成28年度に総務省の「災害情報伝達手段等の高度化事業」の採択を受け、平成30年度から運用している。
取組の内容と現在の状況
- コミュニティFMは、通常時は、あかがねミュージアム内のスタジオから放送されているが、緊急時には、新居浜市消防防災合同庁舎内の防災行政無線室からの割り込み放送ができるようになっている。
- 同報系防災行政無線やJアラートとも連動しており、緊急地震速報や国民保護情報などが発表された際には、電源がオフであっても防災ラジオが自動で起動する。
- 運営は、新居浜市及び西条市を放送範囲とするハートネットワーク社というケーブルテレビに委託している。市としての事業であるが、コミュニティFMそのものだけでなく、地域コミュニティの形成と、災害に強いまちづくり推進のため、普及促進事業も新居浜市民がコミュニティFMラジオ受信機器(普通のラジオ受信機としての利用も可能だが、緊急地震速報や市からの避難勧告等重要情報の放送時には、電源が確保されていれば自動で起動して流れるという特徴がある)を購入する際、費用の3分の2を補助するという形で行っていた(2022年完了)。
- このように防災無線としての機能強化を図った本事業であるが、コミュニティFMは、地域密着メディアとしても活用されている。通常時は、行政や各種団体と連携し、地域情報に特化した自主制作番組、市民参加型のコミュニティ番組を放送することで、広く市民へ行政情報を提供する広報媒体として、シティブランド戦略の一翼を担っている。
今後の取組と課題等
【課題】
(1)リスナーの確保と番組内容の充実
(2)出演者の確保(職員が出演することに関して消極的である)
(3)スポンサー企業の確保(現在、ラジオのみの運営では赤字)
(4)パーソナリティの育成
(5)カバーエリアの拡大
【取組】
(1)ほかの広報媒体(SNS、ホームページ)でのコミュニティFMの周知
コミュニティFMの周知に向けた各広報媒体との連携強化
(2)職員の広報活動への意識改革と定期的な職員研修の実施
(3)パーソナリティ研修会
所感
コミュニティFMについては、有事の際の広報手段としてのラジオと、その普及手段について学ぶことができた。このことは、大府市においても参考になるものになると考えられる。また、コミュニティFMは、地域コミュニティの形成にも大いに役立つと考える。
本市においても、今後、行政だけで様々なことに対応することが困難になってくるので、「住民が主役のまちづくり」を進めるためにも、人材の育成、財政支援など、取組の基本的な考えやルールをわかりやすく示すことが重要である。防災の一環として用いるラジオを日頃から親しんでもらえるようになっている本事業は興味深く、本市でも知多メディアスネットワークなどと連携し、活用することを模索できるのではないかと考える。
市役所オフィス改革、職員の生産性向上について 【愛媛県西予市】
取組の背景及び目的
西予市は、平成16年に合併して誕生したが、合併以降、人口は減っている。さらに、少子高齢化によって、今以上に人口が減ることが予想され、加えて合併の優遇措置も終わるため、市の職員数をカットしてコスト削減を考えなくてはならない状況にあった。しかし、それでも多様化するサービスに対応する必要があり、今まで以上に、質の高いサービスを住民に提供しなくてはならないため、「職員の意識改革を図って、労働生産性を高めるために従来の働き方を見直そう」と考え、オフィス改革を行った。特に、総務省からの出向者を中心に改革が進められた。
取組の内容と現在の状況
いわゆるフリーアドレスの形態を取り入れている。課長席の前に、課の机がズラリと並んで島を形成し、それぞれの課の間は、書類棚で仕切られていた。まず、これを取り払って見渡しを良くし、既存の机でレイアウトを変更し、袖机をなくし、打ち合わせスペースを設置した。
次の取組として、デザイン経営工学の京都工芸繊維大学の教授、社会心理学を研究している東洋大学の教授、一級建築士事務所の代表の3者と協力して進めていくことにし、「オフィス改革産学官連携・協力協定」を締結した。職員向けには、オフィス改革を理解するため、何度もワークショップを開催した。この改革には、産業心理学の視点を取り入れられた点も注目である。
職員が来庁者に気づきやすくするため、平行配置をやめ、斜めに隣り合うようにした。また、業務に、より集中できる場所の必要性についての意見で、「集中」をコンセプトにした、窓際に一列に机が並んでいる席を設け、仕事に没頭したいときに使用できるようにした。さらに、自分の席を持たずに机の上の書類などを全てなくし、好きなところに座れるようにした。チーム席は全職員の70%程度とし、残りの職員は新たに「コミュニケーションスペース」をつくり、そこで仕事をする。これを実現するため、無線LAN環境を構築し、全員にPHSを導入することで、どこに移動しても仕事ができる環境となっている。
来庁者向けの窓口は、庁舎1階に「総合窓口」という形で相談窓口を明確化・ほぼ一本化し、専門的な相談になる際は、担当職員が総合窓口に来たり、専門窓口へ行ったりするようになっている。そこには、個別相談ブースやキッズスペースもあり、来庁者への配慮が行き届いているように見受けられた。
袖机やロッカーなど、書類を保存できるスペースを大幅に減らすことで「紙で保存する」という各人の意識をなくすように促し、資料はデータで保存し、会議のたびに膨大な紙資料を持ち歩く必要をなくし、大画面のモニターやプロジェクターを使用して、資料を投影するように改善した。
最も変わったのは、職員同士のコミュニケーションが格段に増えたことである。以前は消耗品の保管場所や給湯スペースが各課にあったが、1カ所に集約した。その結果、コミュニケーションが自然と生まれ、それまであまり接することのなかった人たちとの会話が増えた。それにより、他部署のことも少しずつわかるようになった。実際のアンケートでは、約8割の職員が「以前よりコミュニケーションが増えた」と答えている。
これらの取組には、やはり抵抗勢力は大きかったとのこと。反発の少ないところから徐々に進めるというやり方で、少しずつ取り組んできたのが奏功した。課題として、「これまでの働き方を見直すという意識を継続的に持つこと」が必要と考え、今後も全員参加型の変革にチャレンジする必要性を感じているという。
所感
オフィス改革とは、単に内装を変えることではなく、最大の目的は「働き方を変える」ことにある。その本質を忘れずに、従来のトップダウン型からボトムアップ型へ、指示待ちから自発的へと転換を図ることで、住民へのサービス向上につながると考える。
本市においても、職員は、「虫の眼、鳥の眼、魚の眼」を持ち、職員同士のコミュニケーションを意識して行政運営を進めていくことが必要である。
追録
上記、3市の視察報告は以上ですが、その合間で、「別子銅山近代化産業遺産」(愛媛県新居浜市)と「松山アーバンデザインセンター(UDCM)」(愛媛県松山市)を見学してまいりましたので、その概要を以下に報告いたします。
「別子銅山近代化産業遺産」【愛媛県新居浜市】
本市にゆかりの深い住友が、その経営を担った別子銅山。東平(とうなる)地区は、750メートルの山中に位置し、明治35年(1902)の第三通洞の貫通を契機に、大正5年(1916)から昭和5年(1930)まで別子銅山採鉱本部が置かれていた。最盛期には約5,000人が暮らし、昭和43年に採鉱を休止し人々は離れたが、このような山中に、かつて多くの人が鉱業に従事し、その家族共々生活し、小中学校や神社まである「街」があったとのことであった。
閉鎖された坑道や鉱物輸送用の鉄道跡のほか、当時使われていた機器や住居跡の石垣が残っている。付近は再整備され、歴史資科館、保安本部跡を利用したマイン工房、メインの遺跡となった貯鉱庫と索道停車場の跡、花木園などがある。旧東平中学校跡地の銅山の里自然の家は使命を終え、廃止され、更地になっている。現在は「東洋のマチュピチュ」と称し、観光客を呼び込んでいる。観光客向けにガイド付きで周遊してくれるバスを予約できるといった観光業が機能している点など、本市でも、ふるさとガイドおおぶの活動などに大いに参考になると思われる。
本市においても、様々な文化財を活用した事業を展開していく必要があると考える。
「松山アーバンデザインセンター(UDCM)」【愛媛県松山市】
取組の背景及び目的
松山市では「歩いて暮らせるまちづくり」をコンセプトに、2000年にモデル地区を選定し、まちづくりを進めてきた。UDCM(松山アーバンデザインセンター)がプラットフォームとなり、「公・民・学」が連携して取り組んでいる。
取組の内容と現在の状況
上記のUDCMにより、ロープウェー通り、道後温泉、花園町通りを順次整備し、現在、松山市駅前広場の整備に着手している。特徴的なものの一つは、駅前広場の約半分を使用した広場である。元々駅前の自動車用道路だった部分を整備し、あえて車を入らせない形で整備している。また、その広場に近い駅前通りは片側2車線だったものを1車線にし、歩道・駐輪場、そして荷物搬入がしやすいように車が入れるスペースを設けている。さらに、歩道の各所にベンチ、ウッドデッキなどを配置し、イベントスペースとしても活用できるようにしている。実際にそこでは、近隣市町の名物市が誘致されて、駅前の新たな名物となりつつある。なんと結婚式が行われたこともあるとのこと。これらのイベント企画には市民の声が大いに反映されており、学生のアイデアが採用されイベント開催につながったこともあるそうである。
イベントのない平日などは、どうしても人通りが多くないため、継続的にイベントを開催するなど、どのようににぎわいを創出していくかが課題とされている。
所感
駅前のにぎわい創出、ウォーカブルなまちづくりというコンセプトが随所に形となり(開発途中ではあったが)、徐々に成果を出しているまちという印象であった。今回伺った「もぶるラウンジ」は、その活動拠点として扱われている面があり、ここをベースとして市民との意見交換、イベント企画、その後の取組へのつなぎなど、様々な活動が行われていた。また、ウォーカブル都市らしく「UDCMツアーまち歩き編」として、観光案内のスタート地点としているのは、実践と理論を兼ねた拠点にふさわしい機能である。本市でも、例えば、ふるさとガイドおおぶやKURUTOおおぶを発信基地として、連携した取組ができるとおもしろいと思う。
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